武豊小迎組有志 誂装束一式
(腹掛・股引・手甲)
2014年の10月ご依頼から2015年4月完成まで実に半年の大仕事でした。鳳凰車創建記念誌のありがたいご縁が繋がり、謹んでお世話仕りました。
現行品は真っ黒のサテン生地。普通、装束ならば誰よりも派手で、目立たせるのですがいささか風変わりなご要望・・・〝現行の装束との違和感をゼロにしながらも、新しい意匠を浮かず沈まず表現したい〟まぁ簡潔な言葉ならこんな感じです。
意匠創案を進めながら生地探し、染め屋探し、縫製屋探しを同時に進めました。当初の予定はオリジナルの織生地で考え、全国の業者をあたりまししたが、コスト面とロット面で全然折り合わず早々に断念。織生地のロット・・・桁がひとつ多かったのです。

わかりにくいけど、これがご要望の意匠。体格の差がかなりあり、4サイズに絞って誂えました。



ヒントは〝蜜蜂の巣〟でした。
生地そのものをつくり装束に仕立てるのですから
結構な計算が強いられます。
鯉口シャツによくある〝小紋〟は
決められたパターンを繰り返し並べます。
〝送りつけ〟といいますが、パターン同士の凸凹を噛み合わせ、
どこが境だかわかりにくいようにします。
わかりやすく言うとミツバチの巣・・・
すべて六角形で構成されますが、なんと四つで組んでも
隙間なく埋まります。
これにヒントを得、意匠をおさめる事にしました。


いま一度、
鳳凰車に向き合う。
記念誌編集のおかげで、穴が空くほど見た鳳凰車の意匠を改めて汲んでみたのが甲案。
そして記念誌の装丁に捺した落款を元におこしたのが乙案・・・
どちらもご要望通り、〝違和感をゼロ〟にするためのデザインです。

〝手描き〟で力強く高貴に。
記念誌のときも立ちはだかった〝鳳凰〟という
推しの強いテーマ。
今回は避けずにちゃんと向き合って、
手描きで二案おこしました。
やたら羽根ばかりの印象が強いので、
しっかり大地に足をつけて立った姿・・・
ここまで簡略した鳳凰は
あんまり見かけないんじゃないでしょうか?
このまま硬貨のデザインにしても・・・
以降は、ここまでの組み合わせです。








いよいよ染色・・・念のため1%刻みの四段階でテストをし、さらに三段階・・・打ち合わせを何度も繰り返しながら段々絞り込みました。
つくった長さはおよそ50m!
太陽に反射すると鳳凰の意匠が浮かび上がり、一安心。
年が明けて次は仕立・縫製。
装束を扱える業者さんは全国でもとても少なく,減少傾向。かつては乗馬服を手掛ける程の職人さんにお世話頂きました。検品の段階でも何度か直しがありやり直し、皆さんに渡せたのはなんと、おくるまを曳く前日深夜ぎりぎりでした。
安全祈願祭のお祝いに娘とかけつけ、楽しい宴を頂けました。この半年はデザイン以外の苦労の連続でしたが、乗り越えられたのはひとえにご担当の温かい配慮のおかげでした。いつまでも
鳳凰車とともに
あります
ように。